【インタビュー】内閣官房IT総合戦略室~行政・民間手続きのワンストップサービスの展望(後編)

株式会社ウェブクルー マネージャー 松原義尚氏(左)、内閣官房IT総合戦略室 参事官補佐(当時) 向上啓氏(右)

前編では行政・民間手続きのワンストップサービスが目指す社会のあり方や、ワンストップサービス推進の現状について伺いました。後編となる今回は、ワンストップサービスをはじめ、マイナンバーカードやマイナポータルを基軸とした行政DXの今後の展望について語っています。

本記事は前編と後編の2回に分けてお届けします。こちらは後編です。(前編はこちら)
内閣官房IT総合戦略室は現在デジタル庁へと組織改編されていますが、本文中は取材当時の名称のまま掲載しています。

マイナンバーカードやマイナポータルを基軸とした行政DXの将来像

松原氏:
2021年5月1日の段階でマイナンバーカードの交付率は30%を超えており、国民の行動様式もマイナポータルでオンライン申請を行う方向に向かいつつあるように思います。そうした中で、マイナンバーカードやマイナポータルをベースとした行政DXの将来像は見えてきましたか。
向上氏:
マイナンバーカードで官民すべての手続きをオンラインで完了できる世界が私たちの目指すところです。行政手続きについては、可能な限り多くの手続きにおいてマイナポータルにアクセスし、マイナンバーカードをかざすだけで、わずらわしい記入や役所へ来庁することなく、さまざまな手続きを簡単に済ませられるレベルまで持っていきたいと思っています。

さらに発展させると、マイナンバーカードを持っていれば引越しに関する手続きすら必要なかったりするような世界が理想です。この場合は、民間事業者や行政側が利用者の引越しなどに関する情報を入手出来るようにする必要があります。このレベルを実現できれば国民、民間事業者、行政三者すべてが確かな利便性を感じることができ、マイナンバーカードの普及にさらに拍車がかかるでしょう。
松原氏:
総務省では2022年度内にスマートフォンにマイナンバーカード機能を搭載することを目指した試みも行っているようですが、これもワンストップサービスの普及における大きなカンフル剤となりうる試みですね。
向上氏:
大きいと思います。現状ですとカードリーダーとパソコンが必要ですが、これがスマートフォンの機能として搭載されれば、さらに利便性が向上し、よりマイナンバーカードを用いた官民のサービスが身近なものとなっていくでしょうね。
内閣官房IT総合戦略室 参事官補佐(当時) 向上啓氏

民間が主導で個別最適の時代から全体最適の時代へ

松原氏:
去る5月21日に「デジタル庁設置法」を含むデジタル改革関連の6法案が国会で可決されましたが、その中のひとつ「デジタル社会形成基本法案」の条文には、「デジタル社会の実現に向けて民間が主導し、国や自治体はそれを補助しながら整備を進めていく」という旨の記載があります。民間事業者が主導するにあたり、期待していることはありますか。
向上氏:
官民の手続きのワンストップサービスという大規模な仕組みを実現していくためには、官民双方の連携が必須と考えます。行政手続きについてはマイナポータルが中心となると考えています。民間事業者の手続きについては、行政側ですべての民間事業者と接続するのは現実的ではありません。ですので民間事業者の手続きのワンストップ化を目指すとなると、これらを集約してまとめるハブ的な存在が介在することで、より連携性が高まると思っています。

もし手続きを行う民間事業者が個社個別で最適化を目指そうとすると、全体最適化は実現できないですし、利用者の利便性が大きく損なわれてしまうでしょう。そうした点を踏まえ、国と民間できちんと目指すべき形を共有し、全体最適化や利用者の利便性の最大化を目指す必要性を理解してもらうとともに実際にそれに向けて動き出してもらうことが重要です。それによって本当の協力、賛同が生まれると思っています。
松原氏:
おっしゃる通り、より利活用するためにはハブとなる機関が必要だと思いますが、関わる機関が増えることで情報の管理や制御をどこがどのように担うのかという課題もあります。複数の民間事業者が担うイメージでしょうか。
向上氏:
民間事業者が担う場合もあれば、行政が担う場合もあると思います。ただ民間事業者が担う場合、利用者の利便性を考えると特定の事業者だけが独占できるような状況は好ましくないため、複数社で競争できるような形が望ましいですね。

またセキュリティ面で懸念される方もいますので、それらを担保するような、安心感を与える仕組みづくりを行い、その上で何事もなく簡単にオンライン上で手続きができたという実感を持っていただくことが大切だと思っています。

デジタル化は、費用の削減などに目を向けがちですが、利便性の向上といった付加価値を実感してもらうことが重要です。そして最終的にはその便利さが当たり前になる世界を目指さなければいけないと思いますね。
松原氏:
私たちは協力主体会社という位置づけでこのプロジェクトに参画していますが、民間企業ということで、どうしても利益を軸としたサービスを考えがちになってしまいます。しかしそれでは真に利用者本位のサービスは生まれません。民間は民間同士でコンセンサスを取り合いながら連携していくことが大切ですね。

一方で行政は、競争領域、協調領域、共通領域の3つの中でも、目指すべきゴールを共通化させる共通領域と、行政と民間事業者と利用者で協力しながら取り組む協調領域をいかに整備できるかが、ポイントだと思います。
向上氏:
そうですね。金融機関の場合、顧客の住所を把握する義務がある一方で、住所変更が申請されないなどによる書類の未達といった課題を抱えています。この度の公的個人認証法改正によって、令和4年度にマイナンバーカード保有者の同意を前提としたJ-LISによる民間事業者(署名検証者)への基本4情報の提供が可能になります。このような取組みについてお話をすると、高い関心を示していただける金融機関等もいます。しかし業界や民間事業者の中でも温度差があるため、行政から業界団体や民間事業者へマイナンバーカードの活用やデジタルを活用した全体最適化への理解を働きかけていく必要があると考えています。
株式会社ウェブクルー マネージャー 松原義尚氏

行政DXに向けて大きく前進した1年、今後はステークホルダーの利便性の実感が鍵に

松原氏:
内閣官房IT総合戦略室として、行政DXへの変革のスピードについてどのように感じていますか。
向上氏:
DXというと飛躍的に変革するイメージがあるかもしれませんが、デジタル・ガバメントや行政DXはこれまでの行政の業務改善と一体で実施するものですから、それを実現するためには一つひとつ地道に取り組んでいかなければなりません。デジタル化のためのデータやシステムなど技術的な整備はもちろん、制度の見直しや、自治体と民間、そして国民にメリットを感じてもらえる啓蒙などもあわせて行っていく必要があります。

関連記事:行政DXにみる、DX実現までの3つのステップとは

松原氏:
一歩一歩前進している実感はありますか。
向上氏:
マイナンバーカードやマイナポータルの普及という意味では、この1年ですごく前進した実感がありますね。コロナ禍で人との接触を控える方々が多いこともあります。行政も制度改正やシステム整備などに精力的に取り組んでいます。次の課題は民間事業者におけるマイナンバーカードの導入をしてもらうことです。

またマイナンバーカードと運転免許証の統合も2024年度に予定されており、これによって運転免許証所有者約8,000万人がマイナンバーカードを運転免許証として利用することになると思われます。このようにマイナンバーカードの利用者が増えると、マイナンバーカードに関するシステムの導入費用や利用料も低下すると考えられ、色々な企業が参加しやすくなります。そして参加企業が増えれば、マイナンバーカードでできることが増えますし、民間と行政が一体となってより便利な仕組みを作っていこうという気運も一気に高まっていくことでしょう。
松原氏:
当社としても、内閣官房IT総合戦略室や他の民間事業者としっかり連携しながら、日本の発展に寄与するワンストップサービス実現に取り組んでいきたいと思っています。本日はありがとうございました。
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