【イベントレポート】4月27日新経済連盟主催「引越し・相続等のワンストップサービスについて」

国が掲げる「デジタル・ガバメント実行計画」。この計画では行政手続きのデジタル化を目指す「デジタル・ガバメント推進方針」が示されています。同方針に具体的な取組みとして含まれる「引越し・相続のワンストップサービス」について、 新経済連盟主催のオンラインセミナー「引越し・相続等のワンストップサービスについて」が4月27日に開催されました。

当日は、内閣官房IT総合戦略室参事官補佐の向上啓氏、株式会社ウェブクルー・マネージャー松原義尚氏、株式会社LIFULL HOME’S事業本部プロダクトプランニング1部アフターマケットユニット・ユニット長の吉田真也氏の3名が登壇。同セミナーでは、それぞれの取組みや現在の課題について発表しました。

マイナンバーカードを中核としたワンストップサービスの実現

向上氏からは、オンライン手続きに欠かせないマイナンバーカード・マイナポータルの普及状況の紹介がありました。長らく普及が進まなかったマイナンバーカードは、3月末時点で申請約4,500万枚、交付は約3,500万枚と、急激に登録者数が増えているそうです。「国民のみなさまのマイナンバーカードに対する関心が高まっているのを感じる」と向上氏。

「マイナンバーカードには、さまざまな手続きをオンラインで行う際に必要な本人確認ができる『電子証明書』が搭載されています。電子証明書で本人確認を行う仕組みは『公的個人認証サービス』と呼ばれ、現在は確定申告やマイナポータルのログインなどに利用されています」

さらに今後は、国家資格との連携や運転免許証とマイナンバーカードの一体化等を進め「マイナンバーカード1枚であらゆる手続がデジタルで完結する社会を目指す」とのこと。

そして、行政機関がオンラインの手続きをする際に使うサイト「マイナポータル」でも介護や子育ての手続きをマイナポータルで行うことが可能とのこと。「自治体との連携が不十分などの課題はあるものの、今後はより多くの自治体において電子申請も対応できるようにしていきたい」と、向上氏は意欲を示しました。

つづいて、国が推進する「引越し・相続等のワンストップサービス」の概要に触れました。民間事業者の「引越しポータルサイト」を活用した「引越しワンストップサービス」においては、引越しに関わる自治体・民間企業の手続きの一括完結を目指しているそうです。

「2019年度に引越しに関わる自治体手続きの実証実験を行いました。その結果を踏まえて今国会に住民基本台帳法の改正法案を提出中(5月12日可決)ですが、可決され、令和4年度に導入されれば住民がオンライン上で転出届と転入予約が同時に行えます。すると、住民は転出地の役場に出向く必要がなくなり、転入地の役場でも待ち時間少なく手続きできるようになります」

一方、電気・ガス・水道などの民間事業者は、専用ポータルサイト事業者と連携してオンライン上で引越し手続を申請する仕組みを構築しており、2019年度と2020年度に実証実験を実施。引越しワンストップサービスが実現すれば、電気・ガス・水道の契約、金融機関の住所変更の手続きなど、引越しにまつわるさまざまなストレスが大きく軽減されるそうです。

スマホで電気・ガス・水道の手続きが完結【Smyb引越し手続き】

株式会社ウェブクルー・ライフソリューションディビジョン・マネージャー 松原義尚氏

自動車保険や引越し見積もりなど、さまざまな比較サイトを運営する株式会社ウェブクルー。同社は「Smyb引越し手続き」というサービスを展開し、行政の実証実験にも協力主体として参加しています。登壇した株式会社ウェブクルー・マネージャー松原義尚氏は「スマホとオンラインのみで、電気・ガス・水道の契約手続きを完結する未来を目指しています」と語ります。

「当社では、すべてオンラインで完結するスキームを進めています。現在はユーザーが入力した情報をもとに、申込み会社のオペレーターが“電話で”ユーザーの不足情報や重要事項の説明を行う『電話対応スキーム』が一般的です。しかし、オンラインのみで申込みが完結できれば、オペレーターを通さずに電気やガスの手続きが可能になります。ユーザーは場所と時間を選ばず各事業者のサービスに申し込めるようになるのです」

好きなタイミングで手続きができればとても便利になりますが、「オンライン完結にはさまざまなハードルがある」と松原氏は話します。

「現状、参加企業との連携やシステムの開発にコストがかかるため、参加企業が伸びないのが大きな課題です。そのため、Smyb引越し手続きにご参加いただいている企業は、3商材4社1局とそれほど多くありません」

その解決策として、ウェブクルーでは「入力項目の形式を変換するシステムの導入」を検討しているとのこと。

「まだまだ課題も多いですが、現在のコロナ禍において私自身もオンラインの必要性やデジタル化の流れを強く感じています。これからも、ユーザーとの接点をしっかり保ちながら“引越しの入り口”としての役割を果たしていきたいです」

Smyb引越し手続き【出典】Smyb引越し手続きサイト

80%以上のユーザーが住み替えに伴うオンライン手続きを希望【LIFULL HOME’S】

「私たちも『引越しワンストップサービス』の実現は大きな社会課題として捉え、ユーザー及び事業者のみなさんに、安心と喜びを与えられるよう取り組んでいます」

そう話すのは、株式会社LIFULL HOME’S事業本部プロダクトプランニング1部アフターマケットユニット・ユニット長の吉田真也氏。日本最大級の不動産・住宅情報の総合サイト「LIFULL HOME’S」を運営する同社は、利用者に対するサポートの領域を広げ、引越しや引越し後の手続きを簡単にするサービスを目指しているそうです。

「昨年末当社でアンケートを実施したところ、ユーザーの80%以上が『住み替えに伴うオンライン一括手続きを利用したい』と回答しました。とくに、転出や転入の行政手続きはユーザーの負担も大きいため、法改正も含めて関係各省と連携しながらオンラインワンストップ化を進めていきたいと考えています」

そして、同社が提供している「引越しワンストップサービス」は、LIFULL HOME’Sのサイト上に情報を入力すれば、一括で引越しに伴う電気・ガス・水道の申請が行えるというもの。

「ただ、接続先の事業者さまがまだまだ少なく、接続時のデータセットがバラバラの状態です。そのため我々ポータル側と事業者双方の接続時の負荷工数が非常に高く、大きな障壁になっています。しかし、今後はよりオンライン手続きがデファクトスタンダードになると考えているので、関係各省と連携しながらサービスの確立に向けてアクションしていきたいです」

LIFULL HOME’S引越し手続き【出典】LIFULL HOME’S引越し手続きサイト

求められるレガシーシステムからの脱却と全体構造再編

国の目指すデジタル・ガバメント実行計画の目指す先には、利用者にとってさまざまな利便性向上の可能性が期待されます。今回のセミナーではその具体的な内容が示された一方、国や自治体における法整備の必要性や、民間事業者における開発工数の負担、データセットの統一などの難題も浮き彫りとなりました。

デジタル・ガバメント実行計画の実現には、レガシーシステムからの脱却と全体構造の再編が大きなカギとなると考えられます。

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