官民連携で進む煩雑な手続きの簡便化。「行政手続きのワンストップサービス」とは

日本政府はデジタル社会に向けた取組みのひとつとして、行政手続きのワンストップ化を進めています。

従来の行政手続きは、住民票や戸籍謄本などの書類を行政の窓口で取得して添付したり、行政手続きを所管する各自治体や機関と煩雑なやりとりをしたりと、行政にも利用者にも負担が大きいものでした。

こういった背景から今年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、民間企業と連携して行政手続きをオンライン化及びワンストップ化することで、互いに負担を軽減し、国民生活の利便性向上を目指すことを明言しています。

今回はワンストップ化が推進されている行政手続きの中でも、子育て、介護、引越し、死亡・相続など人々のライフイベントに深く関わる手続きを中心に、どのように民間企業と連携し、手続きの簡便化を目指しているのかを解説します。

行政手続きのワンストップサービス化が進む分野とは

①子育てワンストップサービス

子育てには、児童手当の申請や保育所の入所申請などさまざまな手続きが発生します。しかし家庭ごとに抱える事情が異なるため、手続きに必要な書類もバラバラです。加えて自治体のサイトに掲載されている情報だけでは、申請者本人にとってどれが必要な書類なのかわかりづらいため、行政の窓口に何度も足を運び確認するなど、申請者と行政の両者にとって手間がかかるものでした。

そこで特に負担が大きかった児童手当や保育、ひとり親支援、母子保健の4分野を中心に、2017年からマイナポータル内の「ぴったりサービス」で、申請者が自分の住む地域や家庭の状況などを入力するだけで、手続きに必要な書類を簡単に確認できる「サービス検索」機能の提供を開始しました。その導入率は、総務省の後押しもあって3年後の2020年9月末時点で全自治体の98.5%にも上り、迅速に進められたことがわかります。

また必要書類の検索だけではなく、マイナンバーカードを活用し実際に行政の窓口に行くことなく、いつでもどこからでも手続きをオンライン上で行えるようにする「電子申請」の導入も進み、2020年9月末時点では全自治体の75.6%が対応しています。この電子申請により、行政も手書きで提出された書類の情報をシステムに入力する手間を省くことができるようになりました。

さらにそうした手続きに必要な住民票の写しや印鑑証明書、戸籍証明書などもコンビニで取得できるようになっています。

また予防接種や乳幼児健診のお知らせなど、確認漏れや提出漏れが起きやすい手続きも「マイナポータル」を通じてプッシュ通知するなど、多忙な子育て世代の負担を大きく軽減しています。

子育てワンストップサービス(マイナポータルの「ぴったりサービス」)【出典】内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室「デジタル・ガバメントの取組状況について~ワンストップサービスの実現に向けて~」

②介護ワンストップサービス

介護保険を利用するための手続きには、要介護・要支援の認定や更新、福祉用具の購入費や住宅改修費の支給申請などさまざまな手続きがあります。しかし従来の手続きでは、本人あるいは家族やケアマネージャーなどの代理人が行政の窓口に紙の書類で申請する必要がありました。

そこで2019年から「子育てワンストップサービス」と同様に、「マイナポータル」内の「ぴったりサービス」で介護内容に応じたサービスの検索や手続きの申請を手軽に行える機能がスタートしました。

子育てと同様に介護もまた、いざ介護を行う立場になったとき、介護者はどこに相談すればよいのかなど、必要な情報がどこにあるのかわからず不安を感じることも多いライフイベントです。「介護ワンストップサービス」はそうした介護者の負担を軽減する心強い助けとなるでしょう。 介護ワンストップサービス【出典】内閣官房番号制度推進室「マイナンバー制度の推進について」

③引越しワンストップサービス

引越しを行う際、電気やガス、水道といったライフラインの解約・開始手続きや、年金および健康保険の住所変更、また自動車を所有している場合は自動車の登録変更など、さまざまな手続きが発生します。しかしそれらの手続きは、行政だけではなくさまざまな民間企業とのやりとりが発生するため、全体像が把握できず手続き漏れが多く起きていました。

そこで政府は、引越しをする際に民間企業が提供する「引越しポータル」に利用者情報を登録するだけで、住所変更からライフラインの解約・開始といった引越しに関わる一連の手続きを一括で行えるよう「引越しワンストップサービス」を推進しています。これにより利用者は引越しにおける手間や労力を大きく省くことができます。

関連記事:内閣官房IT総合戦略室が推進する「引越しワンストップサービス」の協力主体会社としての取組みについて

関連記事:【イベントレポート】4月27日新経済連盟主催「引越し・相続等のワンストップサービスについて」 引越しワンストップサービス利用時の流れ【出典】政府CIOポータル「引越しワンストップサービスの推進」

④死亡・相続ワンストップサービス

最後に死亡・相続に関連するワンストップサービスです。 人が亡くなると、遺族は死亡届の提出や年金に関する手続きなど、死亡に関する手続きを行う必要があります。また同時に、遺族間で遺産の分割協議を行うとともに、協議の前後には遺言状などの故人の資産に関する契約書の調査や、資産の調査、相続人が決まった後には資産の名義変更や不動産の登記、相続税の申告などさまざまな手続きが発生します。

遺族は大切な人を失った悲しみの中でも、そうした死亡や相続に関する手続きを進めなければなりません。しかし死亡と相続の手続きは、生涯で何度も行うものではないため、遺族も慣れておらず、手続きの漏れや必要書類の不備があり、手続きを繰り返すことも少なくありません。

そこで政府はこうした複雑な手続きを緩和するため「死亡・相続ワンストップサービス」を推進しています。

具体的には、死亡・相続に関して遺族が行う手続きを見直し、削減するとともに、死後、信頼できる第三者により相続人であることをオンラインで認証された遺族が、生前にデジタル化された故人の情報を死亡・相続の手続に活用できるようにすることで遺族の負担を軽減しようというものです。

またそうした死亡・相続に関する⼿続きの総合窓⼝を⾃治体が円滑に設置・運営できるよう⽀援を行うことで、各⾃治体が遺族に必要な⽀援を迅速に⾏えるようにしています。高齢化社会が加速する今、数あるライフイベントの中でも、この「死亡・相続ワンストップサービス」は今後より必要とされるでしょう。 死亡・相続ワンストップサービス利用時の流れ【出典】政府CIOポータル「死亡・相続ワンストップサービスの推進」

サービスに参画する自治体や企業が増えていくことが利便性向上の鍵に

今回ご紹介したワンストップサービスはいずれもスタート段階であり、国と自治体、民間企業が連携して初めて実現されるものです。今後、本格的な普及を目指すにあたっては、いかに参画する自治体と民間企業が増えるかが鍵となります。

また、行政と民間企業が手続き書類の様式について標準化を行ったり、国民が安心して利用できるようセキュリティ対策を行ったりするなど、足並みをそろえていくことも重要です。協調して業界全体の効率化を図りつつ、さらなる利便性向上に向けて競争しながら成長していくことで、真に国民が利便性を感じられるサービスとなっていくでしょう。

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