行政DXにみる、DX成功への第一歩「標準化」

企業や行政がDX推進に取り組む中で抱える課題のひとつとして、「現在使用しているシステムをどうするか」「新たにシステムを導入しようにも、部署ごとに現在使用しているシステムが違うので、どこから始めればいいのか」といったシステムに関する課題があります。

行政DXにみる、DX実現までの3つのステップとは」では、

  • ビジネスプロセスのデジタル化を行う「デジタイゼーション」
  • デジタル技術を活用してビジネスモデルのデジタル化を行う「デジタライゼーション」

に段階的に取り組んだ後、DXにより変革を実現するというフローを紹介しました。この最初のステップとなる「デジタイゼーション」においては、システムやプロセスの「標準化」が必要となります。

行政の場合、各自治体や各団体で独自にシステムを開発・発展させてきたため、制度改正の度に個別対応しなくてはならず、人的・経済的に負担が大きいものとなっています。企業においても、部署ごとにシステムを導入・運用してきた場合、いざ経営層がデータを活用して意思決定を行おうとしても、各部署からその都度データを集約する必要があったり、意思決定後にその方針を各部署のシステムに反映する手間や追加費用がかかったりと、さまざまな課題を抱えています。

そのためDXを推進する企業や行政の中には、個別にシステムを開発・運用する従来の考え方ではなく、「デジタイゼーション」の段階で全部署や全自治体で共通したシステムを導入し、そのシステムにビジネスプロセスを合わせていく「標準化」の考え方を取り入れる動きが進んでいます。

政府主導で加速する行政DXへの取組み

2020年12月、総務省は「自治体DX推進計画」を発表しました。これは、全自治体のDXへの取組みを足並みをそろえて着実にかつ効果的に進めるために、自治体が重点的に取り組むべき事項や内容を具体的に提示したものです。

特に新型コロナウイルス感染拡大防止のため、外出自粛や新たな生活様式への取組みが進む中、書面や押印、対面などによる従来の行政手続きや業務プロセスについて、抜本的な見直しが急務とされています。そのため「自治体DX推進計画」では、2026年までを目標に一気に行政のデジタル化を進めるための重点取組事項として、

  • 自治体の情報システムの標準化・共通化
  • マイナンバーカードの普及促進
  • 自治体の行政手続きのオンライン化
  • 自治体の AI・RPA の利用推進
  • テレワークの推進
  • セキュリティ対策の徹底

を掲げ、具体的な進め方などを提示しています。

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自治体DXに向け自治体が重点的に取り組む6つの事項【参考】総務省「自治体DX推進計画概要」をもとに弊社で作成 中でも「自治体の情報システムの標準化・共通化」は、2025年度までのシステム移行を目標として1,509億円規模の予算が組まれており、政府が注力している施策であることがわかります。では、なぜこれほどまでに自治体DXにおいて、システムの標準化・共通化が重視されているのでしょうか。

行政ごとに独自導入・カスタマイズされてきたシステムの弊害

住民基本台帳や税務分野における基幹系情報システムなど、従来の行政の情報システムの事務処理の多くは定められた法令の下で運用されてきました。

しかし、地域の規模や環境が違えば求められる行政機能やサービスも異なります。そのため自治体や団体ごとに独自にシステムを導入したり、機能をカスタマイズしたりするなど、個別対応を余儀なくされていました。

加えて、自治体や団体によってシステムが異なると、行政手続きやそれにかかる業務プロセスにも違いが出てきます。この違いは、他の自治体や民間企業との連携が円滑に進まない要因や、よりよい行政サービスの発展にとっての障害になりかねません。

さらに、デジタル化への意識も自治体により差があるため、デジタル化への進行状況も全国で足並みがそろっていないなど、行政のデジタル化にはさまざまな課題があります。

こうした状況は、政府が目標とする下記のデジタル社会の姿とは異なるものです。

デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 引用:首相官邸「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」

企業のDXにも共通する「標準化」の意義

政府は前述した課題を解消するため、すべての自治体・団体に共通するシステムを導入し、そのシステムに業務プロセスを合わせる「自治体の情報システムの標準化・共通化」の方針を「自治体DX推進計画」で提示しました。特に、業務の大半が法令で定められており、創意工夫の余地がない基幹系システムに関しては、

  • 法令に根拠を持つ標準にのっとって開発されたシステムを原則利用すること
  • 自治体や団体による個別のカスタマイズを原則不要とすること

などを明確に打ち出し、円滑な導入・運用を推奨しています。

自治体は、この「自治体の情報システムの標準化・共通化」を行うことで、これまで自治体や団体ごとに発生していた開発・導入・運用にかかる人的・経済的リソースを抑えることができるため、その分より質の高い行政サービスの実現に向けて取り組めるようになります。

また、全自治体の行政手続きや業務プロセスを「標準化」することで、AI学習によるデータ取得も効率的に行うことができ、行政手続きの利便性や業務の生産性の向上を図ることができます。

加えて、他の自治体や民間企業のサービスとの連携も円滑に取り組めるようになります。これは新たな行政サービスを生み出すチャンスにもつながるでしょう。

さらに、全自治体でシステムを共通化し、そのシステムに合わせて業務を見直すことで、制度改正などによる業務プロセスやシステムのアップデートも全自治体で一律に対応しやすくなります。そのため、長期的に見てもコストを抑えながら、時代の変化に柔軟かつ迅速に対応できるようになります。

こうしたシステムの共通化・標準化の有効性は、企業のシステムにも通じる部分があります。DXのための「デジタイゼーション」の段階で、システムの在り方を見直し、必要に応じて全社でシステムの共通化及び標準化の考え方を導入すること。それこそが急速に変化する今の時代に、柔軟かつ迅速に対応可能な企業へと変革する第一歩といえるでしょう。

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