今さら聞けないDXの基礎知識。Withコロナ/アフターコロナに求められる企業のあり方とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生・拡大によって世界的に大きなビジネスの転換期を迎えた2020年。日本では緊急事態宣言を経て、厚生労働省から「新しい生活様式」が提唱されるなど、Withコロナ/アフターコロナ時代に向けての新たな生活スタイルが形成され始めました。

日本は様式を大切にする文化的背景もあり、ビジネスにおいて新しい考え方や手法の普及がなかなか進みませんでした。しかし、今回のコロナ禍をきっかけに急速に変化が進み、特にこれまで当たり前ではなかった「リモートワーク」という働き方が広がっています。

そうした動きの中で、これから企業に一層求められるのが「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。日本では2018年頃から経済産業省によって推進されてきた概念で、昨今話題に上がることが多くなってきた取組みのひとつ。なんとなく「デジタルによって業務を効率化すること」と認識している人が多いかと思いますが、得られる効果は業務の効率化だけではありません。

この記事では、そんなWithコロナ/アフターコロナの時代にますます求められる「DX」の基礎知識を企業の参考事例を交えながら解説していきます。

そもそもDXとは何か

冒頭でも説明した通り、これからの時代を生き抜くため、企業にはDXの推進が求められています。経済産業省では日本におけるDXのガイドラインを発表しました。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること 引用:「DX推進指標」とそのガイダンス

もう少し噛み砕いて説明すると、DXとは「IT化・デジタル化によって業務効率を向上させるだけでなく、新たな価値を創出する」こととなり、「デジタルによって業務を効率化する」ことだけではありません。

ここで注目しておきたいのが、企業に求められている3本の柱です。1つ目はデジタル化だけではない「データの活用」、2つ目は時流・ニーズに即した「ビジネスモデルの変革」、そして3つ目は「競合に勝つ力」。では、なぜこの3本の柱が必要になるのか、詳しく見ていきましょう。

「2025年の崖」問題から脱却するための3本の柱

日本は新型コロナウイルス感染症が発生する以前より重大な課題に直面しています。それが「2025年の崖」問題。この問題は、経済産業省が発表したDXレポートで指摘された「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」という警告に端を発するもの。2025年前後に、多くの企業の基幹システムを支えるソフトウェアのサポート終了や通信インフラの変化など、複数の変化が集中して起こることが想定されています。20年以上前から続く複雑化・ブラックボックス化した基幹システムに依存している企業は、その対応に多くのリソースが割かれ、新たなシステム開発やIT分野への予算・人材の投入が難しくなることにより、世界的な競争力・経済力の低下が危惧されています。

技術の進歩は驚くほど早く、目まぐるしく環境が変化してきています。最近では、AIやIoT、5Gなど “データありきの技術”が大きなマーケットになっており、今後さらに拡大していくことが見込まれています。当問題に即していえば、こうした情報社会の変化を素早く察知し、状況に応じた判断・変革ができるようにならなければ、同省の警告通り企業の成長は鈍化してしまいます。

そこで重要になるのが今回のテーマであるDXであり、先述の「データの活用」「ビジネスモデルの変革」「競合に勝つ力」の3本の柱です。では、2つの企業のDX導入事例を参考に、この3本の柱について考えてみましょう。

家庭教師のトライ「Try IT」

  • データの活用:家庭教師事業で蓄積された知見やノウハウ
  • ビジネスモデルの変革:基本使用料が無料のオンライン授業スタイルを構築
  • 競合に勝つ力:対面・非対面の双方で教育を提供できること

家庭教師のトライ(以下、トライ)は、「アルプスの少女ハイジ」とコラボした印象的なCMでおなじみの国内最大級の家庭教師事業者。120万人以上の指導実績から得られた知見によって、生徒一人ひとりに適した学習スタイルを提案できることが強みです。

そんなトライから2015年にリリースされたのが「Try IT」というオンライン授業サービスです。スマートフォンやタブレットから視聴でき、教育格差をなくしたいとの思いから受講料やテキスト代は基本無料。わからない部分がある場合は一回500円(500ポイント)で添削や質問をできるという料金体系になっています。

これまで、学校外の学習といえば塾や家庭教師といった対面式の指導がメインで、科目ごとに契約を交わすことが多く、高い費用がかかるという課題がありました。また、学校の授業では一度扱った単元を二度は行わず、年間の学習計画に沿って足早に進むため、理解しきれないまま次の単元に移ってしまい置いてきぼりになる……なんてことも。加えて、スマートフォンやタブレットなどの普及により、現代の小中高生はデジタルネイティブ世代と呼ばれるほど電子端末の扱いに慣れており、教育現場にもICTの波が押し寄せているため、トライはこれまでのアナログなサービスだけでは限界があるという危機感もあったのです。

こうした学習格差に警鐘を鳴らし、時流のニーズに対応するためいち早くDXを活用してオンライン授業サービスを展開したのがTry ITです。家庭教師事業で蓄積したノウハウを生かし、苦手分野や間違えやすいポイント、授業の受け方、さらには生徒の生活スタイルといったさまざまなデータを集積・分析することで、「基本無料」「一回5〜15分程度」「単元ごとに細かく分割」「授業と連動したテキスト・問題集の提供」という最適化された授業形態が完成。時間や場所にとらわれず、不特定多数の生徒が自由に学習でき、格差を感じないような環境を整えることに成功しました。

フリーマーケットサービス「メルカリ」

  • データの活用:社会的な課題・時流に即したマーケット動向を調査・分析
  • ビジネスモデルの変革:オークションからフリーマーケットへと敷居を下げたこと
  • 競合に勝つ力:フリーマーケット市場のパイオニアとして事業を確立

メルカリは、これまで個人間で煩雑な取引きが発生していたインターネットオークションを、より簡単にアップデートしたフリーマーケットサービスです。

かつてのインターネットオークションは、出品者が最低入札価格を設定し、購入希望者が値段を吊り上げて最も高い人が落札するというスタイルでした。出品者にとっては希望額よりも高く売れる可能性はありますが、出品から入札、落札、支払いと非常に時間がかかり、ひとつの商品を売るために1週間以上かかることも。また、オークションに不慣れな人はなかなか手が出しづらく、仮に落札されたとしても「相場より安く売ってしまった」なんてこともありました。

そんな課題に着目したのがメルカリです。インターネットオークションから、設定した金額を上限としたフリーマーケット方式へと発想を転換。使用デバイスもパソコンから、身近なスマートフォンへと移行することで手軽さをアピールしました。また、難しいと思われがちな出品作業も、スマートフォンで商品の写真を撮り、説明を入力するだけで出品が完了。出品したい商品の相場がわからない場合は、アプリ内の出品タブから商品を撮影することで平均出品価格が算出されたり、バーコードを読み取ることで出品額や商品名、商品説明を自動入力してくれたりするサービスなどもあるため、初めてのユーザーも安心して利用することができます。

個人間の取引きとなると個人情報の管理が心配というユーザーには、匿名で売買できるサービスもあり、安心して取引きが行えます。加えて、売上金は銀行振込により現金受取りか、メルカリのキャッシュレスサービス「メルペイ」へのチャージかを選択でき、この点に関してもスマートフォンやキャッシュレス時代と呼ばれる昨今の流れとマッチしています。

これまで敷居が高いとされてきたサービスの課題を洗い出し、フリーマーケット市場のパイオニアとして、DXを活用して「誰でも」「簡単に」個人間の取引きを行えるよう改善したことこそ、メルカリが成功した要因です。

このように、DXにおける3本の柱はそれぞれが独立したものではなく、非常に密接し連続性のあるものです。企業は、単にデジタル技術による効率化だけではなく、デジタル技術を活用した新たな製品やサービスを生み出していくことが求められているのです。

これからの企業のあり方

今回紹介した事例から読み取れるように、現状の課題はビジネスの種となり、連続性のある3本の柱に支えられて成長し、製品やサービスとして開花します。そしてその製品やサービスで得たデータ・ノウハウを次にどう活かしていくのか、潜んでいるニーズに応えるためにはどうすれば良いのかを考え続けること。DXとはその繰返しです。

まずはDXとは何かを理解し、自社の課題は何か、自社は何のためにDXを行うのかを精査した上で、必要なところから少しずつ始めることが望ましいでしょう。

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