スマホやドローンの活用も。「i-Construction大賞」受賞自治体に見る建設DX

長時間労働や人材不足といった問題を抱える建設業界。国土交通省は平成29年より、そんな建設業界の生産性を革新的技術によって向上させようという取組み「i-Construction」を推進しています。これを受けて近年、建設業界や自治体では、AIやドローン、クラウドカメラなどを用いた遠隔作業やデータ活用などの取組みが進められてきました。

こうした取組みの中でも、特に他社や他自治体で展開可能な優れた取組みに対して、国土交通省は「i-Construction大賞」を授け、その取組みの詳細を公開し、日本の建設業界全体での生産性向上を図っています。

そこで今回は今年3月に発表された「令和3年度 i-Construction大賞」を受賞した取組みの中でも、自治体部門でどのような取組みが評価されたのか、またそうした取組みを他自治体で行う際に活用できるサービスを紹介します。

令和3年度 i-Construction大賞 受賞自治体

栃木県:スマ―トフォンを活用した道路の維持管理DX

これまで栃木県では公道の維持管理についてパトロール班員が道路状況を確認し、交通などに支障をきたす草木を排除したり、側溝を掃除したりしてきました。そしてそれらの作業後に事務所に戻り、エクセルや住宅地図に現場写真を貼り付けるなどして報告書を作成しています。

しかしこれらの作業は多い日には1日60ヶ所以上にも上るため、報告書作成は班員の大きな負担となっていました。

また道路のひび割れの有無や平坦性といった舗装状況の点検についても、定期的に行うためには専用の車両や専門家を手配する必要があり、その費用も高額なため、5年に一度行う程度にとどまっていました。

そこで栃木県では、スマートフォンで現場写真を撮影するだけで位置情報や対応時間などを含んだ報告書を自動作成するサービスを導入しました。
これによりこれまで3人で40分かかっていた報告書作成業務が、1人のみ、時間も10分で完了できるようになり、その分現場作業に従事できる時間や件数を増やせるようになるなど業務効率化と省力化に成功しています。

また従来の報告書は紙で管理していたため記録保存には不十分でしたが、クラウドサービスを用いることで保存が容易になりました。加えて保存した記録から月報や年報も自動作成できるようになり、傾向を分析した上で工事の選定根拠に活用することも期待されています。

さらにスマートフォンに内蔵された鉛直加速度計を用いて、日常業務の中で路面状の調査をできるようになりました。これは専門の車両や専門家による調査に比べ品質は劣るものの、低コストで日々数値化し、災害時などにそれらの直近の数値と迅速に比較、被害状況を確認できるようになった点では評価されます。

このようにスマートフォンを用いた低コスト、かつ他自治体でも導入しやすい取組みが評価され、栃木県は「令和3年度 i-Construction大賞」国土交通省大臣賞を受賞しています。 位置情報、対応時間、ルート図、位置図、写真帳が自動作成されるパトロール業務報告書【出典】i-Construction推進コンソーシアム「i-Construction大賞(令和3年度)」受賞者取組内容 地方公共団体等の取組部門 国土交通大臣賞

北海道札幌市:ICT技術を活用した除雪作業DX

豪雪地帯の札幌市では毎年雪の除排雪作業が必要ですが、これまで除排雪を行う際は作業の安全性を確保するため、除雪機械にオペレーターと助手の2名が同乗していました。しかし現在の除排雪作業従事者の約2割は60歳以上で、今後10年で従事者が約2割も減少すると予測されていることから、業務効率化が急務とされています。

そこで札幌市は除排雪作業を1名で行えるよう、機械の更新時に安全補助装置付きの1人乗り用除雪機械(グレーダ)を導入しています。さらにタイヤショベルや除雪トラックといった既存の機械には、カメラやセンサーなど安全補助装置を設置することで、1人乗り化を推進しています。
また1人乗り化によって作業効率が落ちないよう、現場の意見を取り入れ、作業環境の見直しを図るほか研修なども行っています。

この取組みは、札幌市と同じように除雪作業が必要にもかかわらず人材不足で悩む自治体でも展開できるため、そのモデルケースとなりうる可能性も評価され、「令和3年度 i-Construction大賞」優秀賞を受賞しました。 除雪機械の1人乗り化に向けて行われたモニタ類を用いたオペレーターの視角対策【出典】i-Construction推進コンソーシアム「i-Construction大賞(令和3年度)」受賞者取組内容 地方公共団体等の取組部門 優秀賞 札幌市

大阪府貝塚市:ドローン測量の活用推進

「i-Construction」の取組みの一環としてドローンの活用が進む今、森林や河川、災害現場など危険な現地に人が立ち入ることなく、短時間で地形の計測や水深データを計測する「ドローン測量」の精度向上が急務とされています。

そこで貝塚市は平成30年4月に一般社団法人ドローン測量教育研究機構と連携し、7haにも及ぶ貝塚市立ドローン・クリケットフィールドを開設、そのフィールド内に国土地理院の承認を受けた2級・4級基準点を設置しました。

また「UAVレーザ機材のボアサイトキャリブレーション」に必要なドローンレーザ測量用の基準点5点も設置し、自治体として国内で初めての常設の精度検定施設となっています。

これらの取組みは、技術者の技量によって精度が大きく変化するドローン測量分野において、その精度向上のための教育に有効であるとして、札幌市と同様の「令和3年度 i-Construction大賞」優秀賞を受賞しています。 貝塚市立ドローン・クリケットフィールド【出典】i-Construction推進コンソーシアム「i-Construction大賞(令和3年度)」受賞者取組内容 地方公共団体等の取組部門 優秀賞 貝塚市 このように「令和3年度 i-Construction大賞」は革新的技術を具体的にどのように活用したかのみならず、他自治体での展開可能性も評価ポイントになっていることが読み取れます。

建設DXを推進するサービス

現場管理やドローン測量のDXを推進するにあたり、実際に活用できるサービスをご紹介します。

ダットジャパンの現場管理クラウドサービス「ゲンバスター」

「ゲンバスター」は、建設現場や設備点検作業にまつわる管理業務をスマートフォン上だけで完結できるサービスです。

「ゲンバスター」を提供するダットジャパンは、30年以上建設土木業界の施工管理システムを開発してきたベンダーであるため、現場の声をもとに機能面だけではなく、現場が長く使い続けられるような操作性も重視したサービスを開発しています。

また「ゲンバスター」は前述の栃木県の事例のようなクラウドサービスでもあるため、現場で作成した作業報告書を指示者と手軽に共有できるため、修正対応もその場ででき、修正のために再び現場に戻るといった、いわゆる「出戻り」作業を削減することができます。

【インタビュー】ダットジャパン~クライアントの声に寄り添って生まれた現場管理ソフト「ゲンバスター」

センシンロボティクスのドローンソリューション

センシンロボティクスが提供するドローンソリューションは、ハードウェア×プラットフォーム×アプリケーションを組み合わせて、保守・点検業務を完全自動化するものです。

企業の要望に応じ、ドローンを用いて「データを取得する」ソリューションは数多く存在しますが、センシンロボティクスでは単に「データを取得する」だけではなく、企業の課題と向き合い、あくまで課題に対する一つのソリューションとしてドローンを提供しています。そのため取得した「データを分析」し、その分析結果を利活用することを重視しています。

またセンシンロボティクスでは前述の貝塚市のように、ドローン測量の精度向上を目指してENEOSと提携し、ENEOSの元石油プラント施設を実験・実証する場として「ENEOSカワサキラボ」を開設しました。ここは新たなレギュレーションの策定や標準化など、単に一企業の課題解決だけではなく、ドローンの未来を議論する場にもなっています。

【インタビュー】センシンロボティクス 〜ハードウェア×プラットフォーム×アプリケーションの3軸で“インフラ危機”を防ぐ

このように「i-Construction」は建設業界や自治体だけで取り組むだけではなく、課題に合わせてさまざまな企業や団体と連携し、多面的なアプローチを行うことで、更なるイノベーションを創出することが期待されます。

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