【インタビュー】応用地質〜社員に余白があることでイノベーションは生まれる。アナログ業務からの脱却を目指すDX戦略とは〜
「【インタビュー】応用地質〜人命が関わるからこそ民間の力も結集する。国内最大手の地質調査企業が目指す防災・減災DX〜」で紹介したように自治体や他業種の大手企業と連携し、防災・減災DXを推進している応用地質株式会社は、中期経営計画にDXを核としたイノベーション戦略を掲げ取り組んでいます。その取組みは社内でも実施され、今年は経済産業省と東京証券取引所によって「DX銘柄2022」に選定されました。
そこで今回は、同社取締役専務執行役員 情報企画本部長の天野洋文氏に、同社がどのように社内改革に取り組んでいるのか伺いました。
DXブーム以前から取り組んできた社内改革
弊社は、社会的に重要なテーマである「インフラ・メンテナンス」、「防災・減災」、「環境」、「資源・エネルギー」の4つの領域で事業を展開してきた企業です。
私が入社した2017年当時はまだアナログな会社でした。現場に行き、センシングや物理探査などによって地質や地盤を調査し、事務所に戻ってデータをまとめて解析する学術的な世界だったのです。
そこでそれらをデジタル化し、新しいビジネスを創出することを目指して情報技術企画室が開設されました。
情報技術企画室ではまず「地盤情報ICTプラットフォーム」の構築を目指しました。これは、弊社がこれまで蓄積してきた地盤調査データとノウハウを集約し、データベース化することで、業務の効率化や生産性を高めるとともに、地盤データを3次元で可視化したり、他のオープンデータなどと組み合わせたりすることで、新たなサービスを展開するための核にしていこうというプロジェクトです。
例えば、丘陵地にマンションを建設する場合、数カ所をボーリング(地表から特定の深度まで円筒形の孔を掘削し、土壌採取や試験によって各地層の深度や強度、性質などを調べる調査)し、地盤の状態や支持層を確認していきます。しかしこれで分かるのは各ボーリング地点の情報だけで、それぞれで調査した地層の深度を直線で結んで空間を把握しようとしても、実際の地層は湾曲していることもあるので、実態とは異なる地質図ができてしまいます。こうした不確実性を埋めるために、弊社では物理探査機器などを用いて独自のノウハウを生み出してきました。
しかしこういったノウハウは各社員の頭の中やキャビネットに蓄積されていたので、これをまずはデータベース化し皆で共有化しようと試みたのです。これが社内の知見を集め、技術を継承し、既存のビジネスをサポートし、新しいビジネス領域を作るスタートになりました。
クラウド導入で実現した働き方改革
そしてこのプロジェクトを皮切りに、弊社では
- ① いかに業務を効率化し、生産性を向上するか
- ② 自治体や建設業界など既存のお客様が推進するDXを支援するために、デジタル技術を用いてどのようなサービスを提供すべきか
- ③ これまでにない新たなビジネスをいかに創出するか
この3つの領域を軸に、構造的かつ戦略的にDX施策を進めてきました。
例えば社内の働き方改革でいえば、地質調査を行う際、従来は技術者たちが現場で日中に調査し、その後、夕方に会社に戻って試験結果やデータをまとめるといった作業が行われていました。しかし現在はその一連の作業にクラウドサービスを用いることで、現場から試験結果を直接送信し、整理もある程度自動化できるようになり、労働時間の短縮につながっています。
このように元々長時間労働などが課題感としてあった弊社では、働き方改革というワードが出てくる前から、取り組んできました。テレワークもコロナ禍前から導入していたため、コロナ禍になった際も、それほど業務に大きな支障はありませんでした。
DXを経営方針の核としてトップダウンで改革することの重要性
当然こうした変革に対しては、社内から反発も生まれました。従来の方法で支障なく業務が進んでいるにも関わらず、新しいシステムを導入する意義があるのかというのです。これはもっともな意見ですが、そうした意見を調整したり、反映したりしながら全ての業務を分解し、各所に見合うシステムを検討していては、何年経っても導入できないでしょう。近年は日進月歩でテクノロジーも進化しているため、導入する頃にはさらに新しくて便利なサービスが登場しています。
そこで弊社は基幹システムに付随するシステムを一気にクラウドサービスへ切り替えました。まずは導入して、それに合わせてワークフローとマニュアルを変えていけばよいという考え方で進めたのです。それでもし不具合があれば都度カスタマイズすればいいですし、全てうまくいかなくても、クラウドサービスならやめてしまえばよいですからね。
世間では「DX戦略はそもそも経営戦略だ」と言われます。デジタルテクノロジーをフル活用して、働き方も、ビジネスも、企業文化までも変革してしまうことをイメージすれば、DXは経営戦略の核であるべきで、トップダウンで強く進めることが重要となります。慣れるまでは社員も大変ですが、数年後には何事もなかったかのように便利に使われていることでしょう。
社内外でイノベーションを起こし、DXを実現するためには、まず社員に余白があることが重要です。ずっと現場に向き合っていては頭がリフレッシュされないため、新たな発想は生まれません。余白を生み出すことで、お客様のDX推進を支援することも可能となりますし、新しいビジネスを生み出すアクションにもつながります。そのため、応用地質では今後もデジタル・トランスフォーメーションを推進していきます。
1986年生まれのライター。過去に400件以上の取材記事を執筆し、近年はスタートアップやテクノロジーなど、ビジネス領域を中心に活動中。著書に『京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)』。
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