全社的なDX推進を担うプロジェクトリーダー「CDO」とは?
新型コロナウイルスの感染拡大や働き方改革などが進む今、DXに取り組む企業が増えています。今年4月、独立行政法人情報処理推進機構が公表した「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」によると、調査に答えた約2,000社のうち、DXに取り組んでいる企業は53.2%と、昨年度の41.2%と比べ、10ポイント以上増加しています。
DXに取り組んでいる企業の規模も、昨年度は従業員数1,001名以上の企業が中心であったのに対し、今年度は従業員数1,000名以下の各企業規模層の約6割が取り組んでおり、大企業から中小企業まで満遍なくDXに向けて動いていることがわかります。 従業員規模別のDX取組み状況【出典】独立行政法人情報処理推進機構「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」 しかし、DXに取り組んでいる企業のうち、約半数の企業が「成果なし」と回答しました。その要因としては人材不足が多く挙げられており、
- DX実現に向けた経営戦略や必要なIT人材の採用要件が明確でない
- 制度面や採用した人材の育成環境といったマネジメント面の整備が追い付いていない
などIT人材の採用や維持に関する企業側の課題も少なくありません。 IT人材を新たに採用する阻害要因【出典】独立行政法人情報処理推進機構「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」 DXを実現し、成果を出すためには、DX実現までの戦略を明確化し、戦術レベルまで落とし込める人材や、その戦略・戦術に基づいてプロジェクトを実行する組織が必要です。そこで今回は、DX推進の旗振り役として日本でもその重要性が認知され、設置する企業も増えている「CDO(最高デジタル責任者)」を例に、DXを推進するプロジェクトリーダーに求められる役割やスキルをみていきましょう。
日本企業でも増えているDX推進の統括責任者「CDO」
CDOは「Chief Degital / Data Officer」の略語で、企業のDXを推進する最高責任者を指します。日々デジタル技術や顧客のニーズが変化する今、企業の競争力を上げるためには、それらの変化をいち早く察知し、迅速に対応することが大切です。そこでCDOには、デジタル技術を活用した経営戦略の立案をはじめ、CEOやCOOといった各最高責任者の意思を統一しながら、全社的にDXを推進する組織の構築や運営が求められます。
ITやデジタル関係の最高責任者には、情報システムの開発を行うCTO(最高技術責任者)や、情報システムの最適化を図るCIO(最高情報責任者)などがありますが、CDOはデジタル技術を活用した戦略立案や組織運営を担うため、これらの役職とは求められている役割が異なります。
CDOに求められる4つのスキル
では、DXを成功に導くために、CDOにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。
①リーダーシップ
まず1つ目は、DXによって解決を目指す課題を抽出し、解決に向けてプロジェクトを主導する「リーダーシップ」です。前述の調査でも、全社戦略に基づいて全社的にDXに取り組んでいる企業ほど、DXの成果を実感していることを鑑みると、状況に合わせて迅速に意思決定を行い、さまざまな事業や部署を横断しながら改革し続ける「リーダーシップ」の重要性は明らかです。
②社内調整力
次に、DX推進に向けて経営層から社員まで各セクションと適切なコミュニケーションを取りながら、人材や予算の確保、IT・インフラや制度の整備などの合意形成を行う「社内調整力」です。
特に現場の協力が欠かせない取組みでは、その直属の上司やチームに対し、プロジェクトの意義や求める業務内容、成果の指標などを丁寧に説明することで、プロジェクトを円滑に進めることができます。また事業や部署ごとに予算を組んでいる企業の場合、全社的にプロジェクトに取り組むことが「将来的な事業や部署の成長」につながることへの理解を促し、予算を調整する能力が求められます。
③プロジェクトマネジメント力・実行力
実際にDXに向けた取組みが始まると、必ずしも計画通りに進むとは限りません。そのため、状況に合わせて適切に人員や予算といったリソースを再分配しながら進めていく「プロジェクトマネジメント力」や、プロジェクトを完遂する「実行力」が必要です。
④文化醸成力
またDXに向けた取組みは、一過性のプロジェクトではなく、継続的に取り組むことで徐々に成果が出てくるプロジェクトです。そのため、無理なく継続的に取り組めるよう社内にDXの文化を醸成する力も必要になってきます。
特にこれまで属人的な経験則をもとに経営の意思決定を行ってきた企業の場合、デジタル技術を活用してデータを集積・分析し、意思決定を行うまでの一連の流れが文化として根付くまで、忍耐強くその重要性を訴え続ける必要があるでしょう。
最後に、これら4つのスキルに加えて、実働部隊の技術者たちとやりとりするCDOには、デジタル関連の知識や技術が求められます。実際、前述の調査でもIT分野に見識がある役員の比率が高い企業ほど、DXの「成果あり」と答えています。必ずしもCDO自身が業界トップレベルの技術力を持っている必要はありませんが、技術的な負債を残さないためには、適切なシステム設計を主導できるスキルが必要です。
DXへの取組みを進める企業が増える中、優秀なCDOはもちろん、今後優秀なIT人材の獲得競争はますます激しくなるでしょう。そのときに備えて、今からこうしたIT人材の獲得や育成に取り組むことが、DXを実現するひとつの鍵となります。
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