ライフラインやインフラ企業も多数選出!「DX銘柄2022」で評価された取組みとは
今年6月、経済産業省は「DX銘柄2022」を発表しました。「DX銘柄」とは、経済産業省が東証上場企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業の取組みを紹介することを目的として創設したものです。
公開された資料には、他の企業が自社のDXに取り組む上で参考となるポイントも多く紹介されています。
そこで今回は「DX銘柄2022」の中でも、ライフラインやインフラに関わる取組みについて紹介します。
DXグランプリ:日本瓦斯
経済産業省は「DX銘柄」の中でも、特に“デジタル時代を先導する企業”にふさわしい企業を「DXグランプリ」として選定していますが、日本瓦斯は昨年に続き、「DXグランプリ」に選出されました。
従来、日本瓦斯はガスと電気の小売事業を担ってきましたが、2021年より遠隔自動検診などができるガスメーターを他社へも提供するプラットフォーム事業を展開、ビジネスモデルを変革させました。
さらに「NICIGAS3.0」という、従来の小売事業(stage1)に加えて、太陽光発電やEV、蓄電池を各家庭にサブスクリプションモデルで展開し、デジタル技術を活用して発電と電気の需要を効率的に運用(stage2=スマートハウス)。AIを活用し、配電ネットワークで接続されたコミュニティ全体のエネルギー利用の最適化を図る(stage3=スマートシティ)取組みを行っています。
これらの取組みに対して同社は机上の空論で終わらせず、「変革に挑戦しないことがリスク」として着実に実現してきた点が評価されました。
日本瓦斯の新時代に向けた成長戦略【出典】日本瓦斯株式会社プレスリリース「「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2022」選定において、「DX グランプリ 2022」に選定されました!」
DX銘柄:清水建設
創業時は宮大工として、現在は大手ゼネコンとして建設事業を担ってきた清水建設は、将来的にデジタルゼネコンとして非建設事業へと事業領域を拡大することを目指しています。
その核となる事業は位置情報システムを基盤とした事業です。例えば建物の所有者、管理者、使用者向けに、位置情報に基づいた設備制御をサブスクリプションで提供するサービスを行っています。また社内に配置された高精度センサーと社員などが携帯するタグから位置情報を取得し、オンライン上のダッシュボードにリアルタイムで執務空間をデジタルツインで再現したり、移動履歴を蓄積したりすることで働き方やマネジメントの改革に活用しています。
これらの取組みは既存事業の受注機会の拡大に寄与する可能性も高く、事業間での相乗効果が期待される点もポイントです。
DX銘柄:旭化成
グリーンとデジタルと人材のトランスフォメーションにより「次の100年へつなぐ」ことを目指している旭化成は、DXの推進にあたりデジタルの「導入期」「展開期」「創造期」「ノーマル期」と4段階にわけ、2022年度は「創造期」のスタートラインと位置づけて取り組んでいます。その取組みの中には社内外の知恵を共有し、共創する場として「CoCo-CAFE」を開設したり、社員がデジタル技術と共創手法を習得できるよう自己啓発プログラムを開始したりするものもあります。
そうした取組みを行うことでデジタル技術を活用した新事業にもつながっています。例えば地震発生後10分~2時間程度で、災害が発生したエリアに建つすべてのへーベルハウスの被害レベルや液状化発生状況を推定するシステム「LONGLIFE AEDGiS」を開発しました。このシステムは、災害後の迅速な復旧・復興支援にもつながると期待されています。
このように旭化成の取組みは、分野や部門を超えてグループ全体で段階的にDXを推進できるよう、目標を明確に定めており、またその目標達成のために社内改革に着実に取り組んでいることも評価されたといえます。
IoT 防災情報システムLONGLIFE AEDGiS システム概略図【出典】旭化成株式会社プレスリリース「旭化成、昨年に引き続き「DX銘柄2022」に選定」
DX銘柄:ENEOSホールディングス
ENEOSホールディングスでは、DX推進にあたり「既存業の最適化(DX Core)」と「新規事業の創出(DX Nest)」の2つの軸を掲げており、現在はDX Coreを中心に取り組んでいます。
例えばAI技術を持つPreferred Networksと共同で、AIを用いて石油精製・石油化学プラントを自動運転するシステムを開発しました。また同社とは材料探索クラウドサービスも提供しており、そこで得たデータや知見をもとに、社内外の低炭素向け材料の開発を加速させることも期待されています。
加えてそれらを担うデジタル人材像として「ABCD人材」(AI analytics、Business intelligence、Cyber security、Design thinking)を定義し、その育成にも注力することで、企業として「ありたい姿」の早期実現を目指しているのです。
DX銘柄:小松製作所
製品と稼働と現場の高度化により持続的な成長を目指している小松製作所は、デジタル技術を活用することで建設現場の安全性と生産性を飛躍的に向上させる新たなビジネスモデル「DXスマートコンストラクション」に取り組んでいます。
中にはビジネスパートナーと組んで、アプリケーションやプラットフォーム、施工の可視化を実現するデバイスを開発したり、それらを用いて施工を最適化するコンサルティングやサポートを提供したりする取組みもあり、持続的な成長に向けて「稼ぐ力を最大化」しようとしています。
DX銘柄:応用地質
応用地質は、創業から60年以上蓄積してきた地質調査関連の製品やサービスにデジタル技術を活用することで、新規事業の創出、既存事業の深化、働き方改革によるDX推進に取り組んでいます。
例えば昨今、豪雨などの災害の甚大化・頻発化に伴い、道路冠水や家屋浸水などが多く発生しています。そのため自治体や道路管理者はそうした状況を迅速に把握し、対策したり、災害後も防災対策へ反映したりすることが求められます。そこで応用地質ではIoT技術を活用し、遠隔監視や制御ができるセンサーを用いてデータを取得し、自治体や道路管理者がパトロールで得た情報や道路規制などの情報とともに、クラウド上で統合、一元管理できる「事象情報管理システム」を開発しました。
加えて応用地質は、こうした自社の防災に関する知見と、他社の知見を合わせることにより日本全体で防災対策を強化できるよう「防災コンソーシアム」を設立。新たに防災ビジネスの創出を目指しています。
事象情報管理システム(イメージ図)【出典】デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022
「DX銘柄」の選定も今年で3回目を迎えますが、今年は企業単体での事業変革だけにとどまらず、他社や他部署と連携した取組みや社内改革も同時に行う企業が目立ちました。また何段階かにフェーズをわけ、一つずつ着実に取り組むことで実現している施策も多く見られます。
そうした先進的な事例と自社の取組みを比較検証することで、より成果につながるDX推進計画策定の可能性が高まると考えられます。
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