DX時代のプライバシーガバナンス。製品・サービス開発におけるプライバシー・バイ・デザインとは

さまざまな業界でDXが進む中、企業が新たに直面している課題として「プライバシー」があります。

例えばECサイトを運営する企業は、商品を購入した顧客の住所や電話番号、決済情報といった個人情報をはじめ、顧客が購入するまでに繰り返し閲覧した商品や何度も購入した商品など、顧客の趣味嗜好を知ることができるデータを保有しています。こうした顧客のパーソナルなデータは、商品開発や販売促進に活かすことができる一方で、適切に管理・利活用することが求められます。

そうした時代の流れを受けて、ヨーロッパでは2018年にGDPR(EU一般データ保護規則)が施行され、日本でも来年4月に改正個人情報保護法の施行が予定されています。また今年8月28日には経済産業省と総務省が「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.1」を公表しました。これは企業がプライバシーガバナンス構築のために取り組むべきことを取りまとめた資料で、プライバシー対応が今後の企業経営に欠かせない要素であることがわかります。

このように国内外でプライバシーの保護に向けた取組みが進む今、プライバシーに考慮した製品・サービス開発を行う「プライバシー・バイ・デザイン」という考え方がグローバルスタンダードになってきています。

「プライバシー・バイ・デザイン」を構成する7つの原則

「プライバシー・バイ・デザイン」とは下記のように定義されており、以下の7つの原則から構成されています。

ビジネスや組織の中でプライバシー問題が発生する都度、対処療法的に対応を考えるのではなく、あらかじめプライバシーを保護する仕組みをビジネスモデルや技術、組織の構築の最初の段階で組み込むべきであるという考え方 引用:総務省・経済産業省「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.1」
原則内容
事前的、予防的

プライバシー侵害の発生後に問題を解決するために行うのではなく、プライバシー侵害が発生する前に予測し、あらかじめ対策を施し、予防すること。受け身ではなく、先見的に対応すること。

初期設定としてのプライバシー(プライバシー・バイ・デフォルト)

製品やサービスのユーザーが特別な手続きをしなくても、利用開始時から初期設定としてプライバシー保護が有効化されていること。

デザインに組み込む

製品やサービスのリリース後に付加機能としてプライバシー保護の仕組みを設けるのではなく、企画や設計段階、さらには事業の構想段階から中核を担う機能として組み込むこと。

ゼロサムではなくポジティブサム

プライバシー保護の仕組みを利用する代わりに利便性を損なうといったトレードオフの関係をつくってしまうゼロサムアプローチではなく、プライバシーを尊重することで企業価値や利益が向上するなどポジティブサムなアプローチを目指すこと。

徹底したセキュリティ

プライバシーに関する情報は、収集・利用・保管・廃棄というサイクル全体を通して、エンドツーエンドで保護を徹底すること。またプロセス終了時には確実に廃棄されること。

可視性/透明性

プライバシーを保護する仕組み(システム構成や機能)は利用者および提供者などすべてのステークホルダーに可視化され、透明性が確保されること。またその仕組みがしっかりと機能することを保証するとともに、機能を検証できるようにすること。

利用者のプライバシーの尊重製品・サービスの開発者・運営者はユーザーのプライバシーを最大限に尊重すること。またプライバシーに関する設定や通知などをユーザーフレンドリーな仕組みにすること。
総務省・経済産業省「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.1」およびInformation and Privacy Commissioner of Ontario「Privacy by Design」をもとに作成

製品・サービス開発の初期段階から、これら7つの原則に基づき「プライバシー・バイ・デザイン」に取り組むことで、過剰にプライバシー対策を講じる必要がなくなります。また万が一プライバシーの流出といった問題が発生した場合にも、対応方法が見つけやすく、迅速に対処することができます。このように長期的に考えると「プライバシー・バイ・デザイン」は、企業のプライバシー対応にかかるコストを低減する考え方だといえるでしょう。

3つの事例に学ぶプライバシー・バイ・デザイン

では実際にプライバシーを配慮した製品・サービス開発とはどういったものがあるのでしょうか。

防災アプリ「ココダヨSOLO」

防災アプリ「ココダヨ」は、緊急地震速報が発令された際にユーザーが震央近くにいた場合、あらかじめ登録した家族や友人などに、自動的にユーザーの現在の位置情報を通知するアプリです。また2〜8名でメッセージをやりとりできるグループ機能やチャット機能もあるため、緊急時には迅速に安否確認したり、避難状況を共有したりすることができます。

この「ココダヨ」アプリは、ユーザーの位置情報を常時把握できる機能もあるため、緊急時だけではなく、子どもや高齢者の見守りアプリとしても活用されています。
しかし日常的に位置情報を知らせる必要はないものの、緊急時には知らせたいといった、単身者やプライバシーを重視しているユーザーもいることから、常時位置情報を共有するのではなく、緊急時のみ位置情報を登録したメールアドレスに通知することができる「ココダヨSOLO」を2021年6月にリリースしました。 防災アプリ「ココダヨSOLO」【出典】プレスリリース「驚異的!継続率98%超の防災アプリ「ココダヨ」に待望の新サービス「ココダヨ SOLO」が登場」

ビデオドアホン「Google Nest Doorbell」とスマートカメラ「Google Nest Cam

スマートカメラと呼ばれる監視カメラには、撮影した映像データをクラウド上に常時アップロードし、玄関先に人が訪ねてきたり、Amazonの置き配サービスなどで荷物が置かれたりしたとき、AIの画像認識技術を用いて自動でそれらを判別し、スマートフォンなどに通知する機能があります。その際、普段と異なる訪問者が来た時にはアラートを出すこともできるため、防犯対策として一般家庭にも普及してきました。また家の外だけではなく部屋の中にも設置することで、子どもや高齢者、ペットなどの見守り機能としても活用されています。

このようにさまざまな形でスマートカメラが活用され始めた一方で、そうしたプライベートな映像をクラウド上に保存することに対して、抵抗を感じるユーザーもいます。
そこでGoogleが開発したビデオドアホン「Google Nest Doorbell」とスマートカメラ「Google Nest Cam」では、映像をクラウドにアップロードすることなくデバイス上で処理を完結する、プライバシーに配慮した設計がなされています。 IoTドアベル「Google Nest Doorbell」とネットワークカメラ「Google Nest Cam」【出典】Google Japan Blog「Google Nest のカメラとドアベルが新登場!」

衝突防止ミラー「FFミラー気配」

コミーが開発した「FFミラー気配」は、トイレの出入口などの壁に貼るだけで、死角の様子を確認できるミラーで、出入りする人同士の衝突を防ぐミラーとして活用されています。

当初はぼかし加工が施されていなかった「FFミラー気配」ですが、ユーザーからの「トイレの中が見えすぎると困る」という声を受け、鏡面にぼかし加工を施す形で改良されました。これにより今では「適度にプライバシーを守りながら安全対策ができる」と好評です。 FFミラー気配【出典】プレスリリース「衝突を防止しつつ、プライバシーにも配慮した、 人の気配だけがわかる『FFミラー気配』、 イオンモール浦和美園に全面採用!」 いずれも既存の製品やサービスにプライバシーを考慮した仕様を取り入れたものです。このように「プライバシー・バイ・デザイン」の考え方は、開発段階で一度だけ取り入れればよいものではなく、時代の流れやユーザーからの反響などをもとに、常に製品やサービスのあり方を見直し、よりプライバシーに配慮したものへとアップデートしていくことが大切です。

今後さらに問われるプライバシーに対する企業姿勢

近年では個人情報の流出などが社会問題として取り沙汰されるように、ひとたびプライバシーの扱い方を間違えれば、当該製品・サービスだけではなく、企業全体の社会的な信用も損ない、将来的に多大な被害をもたらしかねません。

今後さまざまな業界でデジタル技術の活用が進み、かつZ世代などデジタル技術を幼いころから活用し育ってきた世代が増えていくことを鑑みれば、企業側が先んじて「プライバシー・バイ・デザイン」などの考え方を取り入れ、自発的にプライバシーを考慮した製品・サービス開発を行うことは、持続可能な事業を目指す上で欠かせない企業姿勢だといえるでしょう。

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