DX推進に追い風となる税制改正や規制緩和。「令和3年度税制改正」のポイントとは?

国内でDX実現に向けた取組みが進む中、財務省は企業の経済活動を促進するため、2021年3月に「令和3年度税制改正」を行いました(2022年1月より施行予定)。この改正には「DX投資促進税制」の創設や電子帳簿保存法(電帳法)の改正など、DX関係の優遇措置も含まれており、企業のDXへの取組みを後押しする意思が感じられます。

そこで今回は「令和3年度税制改正」が企業のDXにもたらす影響を解説します。

DX関連投資が税額控除または特別償却対象に。「DX投資促進税制」とは

DXを実現するためには、クラウド型ソフトウェアの新設や増設など、デジタル環境を構築するための投資が必要です。この負担を軽減してDXを後押しするため、「令和3年度税制改正」では「DX投資促進税制」が創設されました。この制度は事業適応計画の認定を受けた企業が、その計画に基づいて行ったデジタル関連投資に対し、税額控除または特別償却の措置が受けられる制度です。

対象となる設備

  • 国内事業用のソフトウェア
  • クラウドシステムへの移行に係る初期費用(繰延資産)
  • ソフトウェア、繰延資産と連携して使用する機械装置や器具備品

税額控除限度額および特別償却限度額

課税特例の対象になれば、設備投資総額300億円を上限として(下限は売上高比0.1%以上)、以下のいずれかを選択適用できます。

  • 法人税額の税額控除:取得価額の3%(ただし親会社や子会社などグループ外の企業とデータ連携やデータ共有を行う場合は取得価額の5%)
  • 特別償却:取得価額の30%

適用対象法人

青色申告書を提出する法人であること、かつ認定事業適応事業者(改正産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受けている者)であること。

この認定事業適応事業者になるためには、事業適応計画を提出し、主務大臣から認定を受けなければなりません。その認定要件は、以下のデジタル要件と企業変革要件のすべての項目を満たすことです。

認定事業適応事業者の認定要件【出典】経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について」 認定要件の中にある「DX認定」とは、経営ビジョンの策定やDX戦略・体制の整備などにすでに取り組んでおり、DX推進の準備が整っている企業を、経済産業省がDXReady企業として認める制度です。

関連記事:「DX銘柄」に学ぶDX推進のための企業経営者の在り方

「DX投資促進税制」の適用対象として、この「DX認定」を取得した認定事業適応事業者であることを挙げていることからも、DXを推進するにあたって部門や拠点ごとではなく、経営戦略とデジタル戦略を一体的かつ全社的に取り組むことを重視していることが読み取れます。

「DX投資促進税制」の適用時期は、改正産業競争力強化法の施行日から、2023年3月31日までの2年間です。その前段として「DX認定」を受ける必要がある企業は、早くから取り組む必要があるでしょう。 DX投資促進税制の適用条件と適用フロー【出典】国税庁「令和3年度法人税関係法令の改正の概要」より「第1編 法人税法等に関する改正」

「電子帳簿保存法(電帳法)改正」が経理業務に与える影響

「令和3年度税制改正」の中でDXに関連するものとして「電子帳簿保存法(電帳法)」の改正(2022年1月1日施行)があります。

電帳法は1998年に制定されました。これは国税関係の書類の電子保存を認め、その要件や保存方法を定めた法律です。以降、社会のデジタル化に伴い数回にわたり改正が行われています。ただそれでもなお事前に税務署による承認が必要だったり、一定期間紙の原本を保管しなければならなかったりと、電子保存要件が厳しく企業での導入が進みづらい状況にありました。

しかし今回の規制緩和は内容を大幅に見直し、抜本的に簡素化するものになっています。これにより経理の電子化による生産性の向上やテレワークの推進、クラウド会計ソフトなどの活用による記帳水準の向上を目指しているのです。

具体的には以下の図のようなさまざまな規制緩和が行われます。

令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の変更点【出典】財務省「パンフレット「令和3年度税制改正」(令和3年3月発行)」より「納税環境整備」 このように今回の改正により企業が書類の電子保存に取り組みやすくなった一方で、不正行為に対するペナルティが強化されています。スキャナーで読み取った電子データや電子取引の改ざん、隠蔽を行った場合は通常の重加算税に10%が加算されるようになりました。これは電子保存されたデータが、紙での保存に対して複製・改ざんが容易で、またその痕跡が残りにくい特性を鑑み、講じられました。

電帳法改正とともに、2023年10月には消費税に関するインボイス制度の導入も予定されており、請求書のペーパーレス化など経理業務のデジタル化が加速することが予想されます。

中小企業にも開かれるDX

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、テレワークの導入や働き方改革の一環として、官民ともに業務のデジタル化が進んでいます。

行政はデジタル庁の発足を柱に本格的にDXに着手し、大手企業もDX実現に向けて動き出しています。今回紹介した税制改正や規制緩和により、中小企業がDX推進に取り組むための環境も整いつつあります。今後さまざまな規模の組織において、より一層のDX推進が期待されます。

参考
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