デジタル技術の活用で災害と向き合う。官民連携によるライフラインの防災・減災DX

近年、東日本大震災や熊本地震など災害が頻発化する状況を受け、より迅速かつ的確な災害対応を実現するため、防災分野でのデジタル活用が進んでいます。

2021年12月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中でも、デジタル化を推進する分野のひとつとして防災が挙げられており、

  • 災害時に被災状況など災害対応に必要な情報をより迅速かつ体系的に把握・発信するための仕組みづくり
  • 罹災証明のデジタル化
  • 被災者台帳システムのクラウド化
  • マイナンバーカードを活用した被災者生活再建支援金手続きの簡素化

など、さまざまな取組みが計画されています。

そこで今回は、こうした防災対策・災害対応の中でもライフライン分野においてどのようなサービスや製品が防災に活用されているのか解説します。

円滑な避難支援を可能にする防災チャットボット

市民それぞれの状況に合わせた避難情報などを発信する「防災チャットボット」。「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中でも、訓練と長期運用の実証実験を年間に各3件行うこと、利用可能な地方公共団体を2023年度までに100団体とすることをKPIとして具体的に定めています。

例えばウェザーニュースが提供する防災チャットボット「SOCDA」は、ハザードマップと連動し、地域や気象条件などの情報を基に、必要に応じて所属(消防団など)ごとに情報を出し分けたり、出動要請を出したりすることができます。また要支援者に停電の有無や安否確認など、特に気になる事項について質問や回答を自由に作成し、調査することも可能。

そうして収集した情報をAIが分析、火災や土砂災害など災害種別を自動でカテゴライズし、特に危険な事案に関しては事前登録した近隣の市民に通知したり、隣接する行政と連携した広域避難支援を行ったりすることで、市民の避難支援に役立てています。

また実際に避難を決めた市民には避難所ごとに混雑状況をリアルタイムに閲覧できるようしたり、避難完了までにどのように行動すべきか、対話しながら案内したりすることで、市民から行政への電話による避難に関する問合せを低減。併せて市民の個々の状況に応じた円滑な避難支援を図っています。

実際に2019年に主に千葉県を襲った台風15号・19号では、9,032件の問合せに対してAIが自動応答した実績もあります。

今後「SOCDA」は物資支援システムとの連携や避難所運営支援機能の充実など、官民連携した施策を予定しており、さらなる活用が期待されます。 防災チャットボット「SOCDA」【出典】株式会社ウェザーニュース「防災チャットボット”SOCDA”が実現する災害情報䛾把握と提供」

避難誘導や物資輸送におけるドローン活用

発災時にその地域に滞在し、避難しなければならない人は、日本語による災害アナウンスを理解できる市民だけとは限りません。そこで品川区では、クオリティソフトが提供する「災害対策用アナウンサードローン」を導入しました。これは発災時に区内の状況を迅速に把握するだけではなく、最大29カ国語で避難誘導することができるドローンです。

また山間地の集落が多く、災害時に孤立することが懸念されている福井県越前町では、A.L.I. Technologiesとともに食品や救急・応急用品などの物資をドローンで輸送する実証実験を行っています。このドローンは、2021年4月時点でレベル3(目視外飛行・補助者なし)での飛行に成功しており、今後は東京のオペレーションルームなど遠隔地からの運行管理なども実験予定です A.L.I. Technologiesの実証実験で使用されたドローン。約1kgの物資を搭載し、片道約7kmの飛行に成功した【出典】株式会社A.L.I. Technologies プレスリリース「物流の脱炭素化と災害時の孤立集落支援を同時実現する、レベル3でのドローン物流実証実験に成功」

断水による水不足を解決するソリューション

発災時、上下水道を含む災害復旧には1週間~最大1カ月かかるといわれています。そこでWOTAは、避難所向けに水道がなくてもシャワーや手洗いができる「WOTA災害用パッケージ」を提供しています。

これは水循環技術を用いて、配管工事をしなくても排水をろ過して水を繰り返し循環させることができるシステム「WOTA BOX」と、屋外シャワーキット、手洗いシンクキットがセットになったものです。2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震などで実際に導入されており、1万人以上が利用しています。 WOTAによる令和元年東日本台風長野県長野市避難所での支援の様子【出典】WOTA株式会社 プレスリリース「災害時における断水による水不足を解決し、感染症防止へ シャワーや手洗い等で避難所の衛生環境向上を目指すプロジェクト『#避難所の衛生を守れ』を7月10日(金)より始動」 またアクアムは、空気中の水分を吸着し、ろ過することで空気から水を作る「空気製水機」を開発しました。この「空気製水機」は電池さえあれば飲料水を得ることができるため、太陽光パネルなどの発電システムや蓄電池と組み合わせることで、停電・断水時にも飲料水を確保することができます。

これは、すでに高知県中土佐町の指定避難所である久礼小学校などに導入されており、そうした行政と連携して防災拠点の機能強化を図る取組みが評価され、「第6回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」で最優秀賞を受賞しました。

発災時、電気やガスがない場合もあります。そこでスズキ繊維はそれらなしでも、人の力だけで水を作ることができる災害時用浄水装置「きゃりーぴゅあぴゅあ®Jr.」を提供しています。

これは川などの水源に吸水チューブを投入して、ポンプのハンドルを押し引きするだけで水を作ることができる装置です。小型軽量キャリーケースに収納することができるため、水源まで手軽に持ち運びすることが可能です。

官民連携で進む防災・減災DX

災害に強い街づくりを行うためには、デジタル技術の活用のほか、組織の枠や官民の枠を超えた連携が求められます。

例えばコインランドリーを全国展開しているジーアイビーは、コインランドリーを構える5市町村6自治体と災害協定を締結しています。
これは5市町村6自治体に位置する店舗に3日分のLPガスを貯槽できるLPガスタンクや、そのガスを利用して発電できるポータブル発電機を標準装備し、さらに被災者向けの炊き出しができるようガスコンロやガス炊飯器を完備しておくことで、発災時に緊急避難所として災害支援を行うという協定です。

この「災害対応型ランドリー」は、すでに協定を締結した地域に出店する43店舗が対応しており、今後新規店舗を設置する際には可能な限り「災害対応型ランドリー」として出店することを目指しています。 ジーアイビーによる災害対応型ランドリー【出典】株式会社ジーアイビー プレスリリース「愛知県尾張旭市と「大規模災害時における資機材等の提供に関する協定」を締結」 災害に強い街づくりを進める上でデジタル技術の活用は有効な手段ですが、加えて社会全体で災害と向き合う姿勢がより重要となります。

そして、これからますます増える災害対策へのニーズは、ビジネス的にもさまざまな可能性を秘めた分野です。安心安全な社会の実現に向け、官民連携した防災・減災DXの推進が求められます。

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