【インタビュー】東京電力ホールディングス DXプロジェクト推進室~お客さま視点が起点の「TEPCO DX」とは

電力自由化や脱炭素化、再生可能エネルギーの普及、デジタル化、そして少子高齢化に伴う人口減少など、エネルギー産業を取り巻く環境は大きく変化し、新たな変革の時を迎えています。

そんな中、東京電力グループは「TEPCO DX」として、これまで取り組んできた業務カイゼン活動に、新たにデータやデジタル技術をかけあわせることで、業務プロセスや組織、働き方のすべてを刷新し、生産性の向上と新しいビジネスモデルの創出を目指しています。

そこで今回はグループ全体のDX戦略を策定、展開するための組織として2020年4月に新設された「DXプロジェクト推進室」の平原裕士氏(当時)に、「TEPCO DX」の取組みや変革への思いなどについて聞きました。

組織名、肩書等は取材当時の内容で掲載しています。
文章表記ルールについて、一部取材先様のご希望により本メディアルールと異なる形で掲載しています。

今、なぜ「お客さま視点」での変革を目指すのか

平原氏:
社会状況や当社を取り巻く経営環境が大きく変化し、またお客さまや社会のニーズが多様化・複雑化しています。その変化に対応するためには、これまでの企業視点から徹底したお客さま視点への転換が求められています。それには、まずは組織を支える我々社員の意識変革が必要だと考えています。

現在、事業所窓口の閉鎖などによりお客さまとの接点が少なくなっておりますが、お客さまとの直接的な接点の有無に関わらず、それぞれの仕事の先にいるお客さまを意識することが必要だと考えています。そのお客さま視点を起点に既存の業務プロセスを刷新し、お客さまの期待を超える価値提供につなげていきたい。そんな思いを持ってDXの推進に取り組んでいます。

平原氏自身が自分事として「TEPCO DX」について考えるようになったのは、家族に対する思いからだと言います。

平原氏:
私は2人の子を持つ父親であり、常々子供たちから尊敬される存在でありたいと願っています。子供たちはまだ小さいのですが、将来社会との接点が増え、世界が広がっていく中で『お父さんのやっている仕事はすごい』と言ってもらえるような姿でありたい。そのためにも東京電力グループが社会から信頼される企業になる必要があると思っています。

お客さまの声から生まれる新たな価値

平原氏によると、「お客さま視点を起点に業務を見直し、お客さま体験価値(UX)を向上させる」ための取組みにもデータが活用されていると言います。

平原氏:
これまでも顧客満足度調査を実施しておりましたが、それぞれの組織や部門の中での満足度向上施策にとどまっていました。しかしお客さまにとっては、どの部門であってもすべて同じ『東京電力』ですから、真にお客さま視点で業務を見直すためには、一連の流れの中で業務のプロセスを捉えていく必要があります。

例えば、一部エリアにお住まいのお客さまを対象に『停電』が発生したときにお客さまが感じたこと、考えたことを把握するためのアンケートを実施しています。このアンケートデータをもとに、当社の実際の対応とお客さま評価とのギャップを捉え、組織や部門を超えたバリューチェーンの構築につなげていき真の『お客さま視点』のオペレーションを目指しています。

現在はアンケートという形でお客さま視点と企業視点のオペレーションのギャップを最小化することを目指していますが、将来的にはニーズを予兆し、期待を超える価値提供ができるようになりたいと考えています。

人が起点の企業変革

東京電力ホールディングス DXプロジェクト推進室(当時) 平原裕士氏

「TEPCO DX」を推進していくには、それを成し遂げる企業文化の変革と人財が何より大切だと平原氏は考えているそうです。どんなに優れたテクノロジーを導入したとしても、それを使う社員の意識が変わらなければ“宝の持ち腐れ”になってしまいます。そのためDXプロジェクト推進室では、意識を変え、変革を成し遂げる人財育成に向けて、さまざまな取組みを行なっています。

平原氏:
例えば、変革へのきっかけ作りのために社内のネットワーク内に『DXポータル』を立ち上げ、DXに関する情報を発信したり、動画コンテンツやセミナーの案内をしたりするなど社内啓蒙活動を行なっています。

また、所属を問わず誰でも参加でき、変革マインドの醸成を目的とした研修を実施しています。この研修は大変好評で、毎回満員です。現在では、180名を超える社員が受講しており、社員の変革に対する意識の高まりを感じています。
研修に参加した社員の中には、職場で自ら周囲に声をかけて、研修で得た気付きを活かして対話会を開催し、問題意識を共有しながら変革に向けた一歩を踏み出している者もいます。

平原氏自身もDXプロジェクト推進室に配属された後、社会の変容や現実の課題を捉え、気付く力や考える力を養う学ぶ動画コンテンツの視聴や、自身の内面を見つめ直すような内容の研修、社外の方との対話により、仕事に対する意識が変わったと言います。

平原氏:
DXプロジェクト推進室に配属されるまで電力設備関連の業務を担務していた私は、自分の仕事は安定供給と公衆安全を守ることが第一だと考えていました。しかしDX研修を通じて社内外の方々と対話の機会を得る中で、それに加えて、新しい価値を生み出すことが大切だと気付かされました。

そのためには、従来の業務のやり方ではなく、バリューチェーンを意識した業務プロセスに変革していくことが必要だと考えるようになったのです。

企業が変革するためには社員が起点となった変革が必須であり、社員の一人である自分が先ずは変わらなければなりません。

以前の私は、自分の意見を言う必要性をあまり感じていなかったので、発言を控える傾向にありました。しかし、これらの経験を通じて“対話の大切さ”を学び、私自身も意識が変わっていきました。

まずは社員一人ひとりの変革マインドを醸成し、変革を起こす人財を育成すること。それがDX推進の土壌を整えていくことに繋がり「TEPCO DX」の第一歩といえます。

一人ひとりの変革マインドが実現していくもの

東京電力ホールディングス株式会社 本社

2021年7月に「安⼼で快適なくらしのためエネルギーの未来を切り拓く」というミッションを掲げ、経営理念を刷新した東京電力グループ。長年ライフライン企業として人々の生活を支えてきた同社においても、電力自由化などにより企業競争力が強く求められています。

単にデジタル技術を取り入れるだけでなく、社員一人ひとりが「お客さま視点」で、業務や組織の枠にとらわれずに「変わろう・変えよう」という意識を持つこと。そうした人財を育成し、企業文化を変革していくこと。これにより社会的な課題解決につながる新たな価値を創出し、企業価値と信頼の向上を目指しているのです。

取材・文=市川昭彦
システムエンジニアとして設計・開発業務に携わった後、テクニカルライターとしてIT系の記事執筆を開始。豊富な取材経験を活かし、近年は経営者や研究者などのキーパーソンインタビュー記事を数多く手がける。
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