世界各国でその動きが加速。本格的なEVシフトを前に台頭するEV活用ビジネス

北欧をはじめ、欧米やアジア各国が脱炭素に向けて2030〜2040年を目処にガソリン車の新車販売の禁止を目指す中、日本では2021年12月トヨタ自動車が2030年までにEV(電気自動車)に4兆円規模で投資することを発表し話題になりました。このように自動車メーカーが本格的にEVシフトする今、駐車場へのEV充電器の設置が急務とされています。

そこで今回は、サービスエリアや小売店舗、マンションなどの既存の駐車場にEV充電器を追加設置するサービスのほか、開発当初から全戸にEV充電器が付いている不動産、またそれらのEV充電器を手軽に利用管理できるサービスなど、次々と登場するEV活用ビジネスについて紹介します。

①既存の駐車場へのEV充電器追加設置

従来のガソリン車はガソリンスタンドで燃料を補給すればすぐに動きますが、EVは電気をある程度の時間、充電しなければ動きません。そのため日本政府は、EVの利用環境についてガソリン車並みの利便性を実現するため、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、2030年までに15万基の充電インフラを設置することを目標として掲げており、そのための導入支援策なども展開しています。

こうした状況を受けて、スーパーやホームセンターといった小売店や飲食店の中には、EVの充電器を駐車場に追加設置するケースが増えています。例えばホームセンターを運営するカインズは、東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資する「e-Mobility Power」と提携し、「カインズ朝霞店」を皮切りに同社が運営するホームセンターの駐車場にEVを短時間で充電できる急速充電器を設置しています。これは将来的にEVが普及することを見据えて、集客などの観点から取り組んでいるものといえるでしょう。 EV用急速充電器【出典】e-Mobility Powerプレスリリース「株式会社カインズとの EV 用充電器設置に関する包括契約締結について」

ただし、どれほど小売店やオフィスに充電可能な駐車場ができたとしても、携帯電話と同じように夜の就寝中に充電できる駐車場が家のそばになければ、EVを普段使いしにくいものです。

しかしマンションの駐車場にEV充電器を設置する場合、共用の電気を使うことになるため、誰がどの程度充電したのか明確化できなければ、マンションの管理組合や住民から設置に対して賛同を得にくくなってしまいます。

そこでユアスタンドは、マンションの駐車場にEV充電器を設置するだけではなく、EV充電器の利用予約や利用量に応じた決済が可能なアプリを提供しています。これにより各利用者からユアスタンドへ支払われた利用料金を、ユアスタンドからマンションの管理組合へまとめて支払うことができるため、利用管理と利用料金の徴収が容易になります。 ユアスタンドアプリ【出典】ユアスタンド プレスリリース「2030年代にガソリン車新車販売禁止へ。集合住宅における電気自動車(EV)充電の課題をアプリで解決!「Multi Charging Control」機能を追加。」

ユアスタンドのサービスは、利用者がアプリで予約した時間に合わせて、IoTコントローラーを用いてEV充電器とマンションの分電盤の間の電源をオンオフすることで実現しているサービスですが、東京ガスが提供するサービス「EVrest」は、EV充電器の利用時に、充電器そばに掲示された専用のQRコードをアプリで読み取ることで充電の開始と終了を操作するサービスです。 EVrestサービスコンセプト【出典】東京ガス プレスリリース「電気自動車充電サービス「EVrest(イーブイレスト)」を開始」

②全戸EV充電器付き不動産

不動産業界でも開発当初から全戸にEV充電器付き駐車場を提供する不動産が登場しています。

例えば野村不動産は、2025年頃竣工予定の新築分譲マンションで、竣工当初のEVの普及率は低くとも、すぐに必要となることを想定して、開発当初から全戸向けEV充電器の設置を盛り込んでおり、来客用には急速充電器付きの駐車場を予定しています。
また東急不動産は、2022年11月頃竣工予定の「ブランズ上目黒諏訪山」で、1都3県で初めて全戸向けEV充電器を設置するほか、その使用料について充電量に連動しない定額制を導入するなど、EVの普及に向けて設備面で後押ししています。 東急不動産「ブランズ上目黒諏訪山」駐車場イメージ【出典】東急不動産 プレスリリース「全戸分の自走式平置き駐車場に EV 充電器を設置」

③法人向けEV予約管理

EVの利用可能性があるのは個人だけではありません。現在社用車として利用されているガソリン車も、将来的にEVになることが想定されています。しかし個人利用とは異なり、必ずしも1人1台EVが与えられているわけではないため、EVの充電時間も考慮すると、誰がどのEVを利用すべきか配車スケジュールが複雑です。

そこで丸紅は、法人が所有するEVの配車・充電タイミングを最適化する車両予約管理Webサービス「おまかせEV for Biz」を提供しています。これはAIを活用して、各EVのバッテリー残量や燃費、過去の利用状況をもとに、EVの配車スケジュールや充電のタイミングを提案するサービスです。時にはフル充電せず、必要な分だけ充電することもあります。これにより効率的に配車できるだけでなく、無駄に充電する必要もなくなるため、燃料コストの削減にも繋がります。
また丸紅はこれらの実績をもとに、今後EVの導入を検討している企業に対し、最適なEV台数や充電器台数を提案する「EV導入効果算定サービス」も提供しています。 法人向けEV車両予約管理サービス「おまかせEV for Biz」【出典】丸紅 プレスリリース「法人向けEV車両予約管理サービス「おまかせEV for Biz」提供開始について」

EV普及の潮流を見極めることでビジネスチャンスに

アメリカでは、政府がEV充電インフラの設備導入に75億ドルの補助金を提示したことで、政府と50を超える電力会社による高速道路へのEV設置が進んでいます。

日本でも2021年12月24日に「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」が閣議決定されました。現在はまだ具体的な上限額について公表されてはいないものの、EV充電器の設備購入費や工事費の一部を補助することが決定しており、今後もこうした制度を活用してEV充電器を設置する場所が増えることが予想されます。これらの動向に注目することで、時には業界を超えたビジネスチャンスの可能性も広がることが期待されます。

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