餅は餅屋に。社外の技術力やリソースを活用してDXを加速させる「API連携」とは
技術の発展や顧客のニーズが変化する中、その分野に強い社外の企業と連携することで、臨機応変に対応していくビジネスモデルが注目されています。
独立行政法人情報処理推進機構が発表した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、変化に強い組織になるべくデジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)に取り組んだ企業の中でも、DXによる効果を実感した企業は、その成功要因のひとつとして「外部企業・組織等との効果的な連携」を挙げています。ベンチャー企業や大学などの研究機関、ITベンダー、コンサルティング企業といった外部の企業や組織と連携し、自社にはない技術力やデータ、顧客基盤、事業ノウハウ、アイディアなどのリソースを補うことで、DXを成功へと導いているのです。
そこで今回は、社外の企業や組織が提供するサービスやプロダクトを、自社のサービスやプロダクトと連携することでDXを加速させる「API連携」について解説します。
「API連携」とは
APIとは「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」の略で、プロダクトやソフトウェア(アプリケーション)同士をプログラミングによってつなぐ規約やルール(インタフェース)のことをさします。そしてこのAPIを利用して、プロダクトやソフトウェア同士を接続することを「API連携」と言います。
例えば通信販売で商品を購入するとき、送付先の郵便番号を入力すると都道府県や市町村が自動的に表示されることがあります。これは日本郵便の郵便番号データベースを基に、郵便番号から住所を自動検索できる「郵便番号API」をお店のシステムにAPI連携することで実現しているものです。
このようにAPIが公開されているプログラムは
- Microsoft Windows、macOS、iOS、Androidといったパソコンやスマートデバイス向けのOS
- YouTube、Amazon、GoogleなどのWEBサービス(いずれもWEB APIとして公開)
- Twitter、Instagram、FacebookなどのSNS
など多岐にわたります。
API連携がもたらす4つのメリット
「API連携」には主に4つのメリットがあります。
顧客の利便性向上、既存ビジネスの効率化
前述の「郵便番号API」を活用した例では、ユーザーは住所入力の手間を省くことができ、利便性が向上します。また決済までの作業を減らすことで、購入のハードルを下げ、ユーザーの獲得率を高めることにもつながります。同時にお店にとっても、郵便番号と住所の不一致などによる住所確認や商品の未達を防ぐことができ、業務を効率化することができます。
人的、経済的コストの削減
顧客のニーズの変化に合わせて、その都度自社でサービスを開発しようとすると、開発費や人件費など負担が大きくなるものです。そこですでに顧客のニーズに応えられる他社のソリューションとAPI連携することで、自社にはない技術を活用して迅速に対応することができます。
例えば、物流システムでトラックの稼働状況を管理する機能を実装しようとした場合、位置や地図の情報が必要です。そこでGoogle マップなどの地図サービスとAPI連携することで、低コストで必要な機能を実装することができます。
加えて連携方法によっては、連携先が抱える新たな顧客層にアプローチにすることも可能です。
変化に対して柔軟かつ迅速な対応の実現
市場の影響を受けやすい業界のシステム運用では、変化に応じて迅速に機能の改修を行ったり、新機能を追加実装したりする必要があります。そこで変化の影響を受けやすい部分については、変化に合わせて提供元が機能を随時アップデートするAPIと連携することで、自社で労することなく変化に対して迅速かつ適切に対応することができます。
新規ビジネスの創出
API連携はプロダクトやサービス間の垣根をなくせるのが強みです。互いに得意な分野を活かし、時には共同で新たなサービス開発を行うことでビジネスの拡大を図ることができます。
さまざまな分野で進むAPI連携の活用事例
では実際にAPI連携はどのように活用されているのでしょうか。
ここでは4つのケースを例にAPI連携がもたらす影響についてみていきましょう。
カード会社と本人確認手続きサービスのAPI連携
freee finance labは、統合型クラウド会計ソフトを開発するfreeeの子会社で、今秋、法人向け統合型ビジネスカード「freeeカード Unlimited」を発行予定です。
「freeeカード Unlimited」では、カード発行の手続きの中で必要となる本人確認作業に、TRUSTDOCKが提供する「e-KYC/本人確認APIサービス」を導入しています。これにより本人確認から審査、カード発行までをスムーズに行うことができます。
関連記事:国内市場規模が前年度比270%!急成長するオンライン本人確認「eKYC」とは 「freeeカード Unlimited」とTRUSTDOCKが提供する「e-KYC/本人確認APIサービス」のAPI連携【出典】プレスリリース「企業成長を支援するための統合型ビジネスカード「freeeカード Unlimited」に、e-KYC本人確認API「TRUSTDOCK」を導入実施」
画像解析AIソリューションと帳簿記入ソリューションのAPI連携
従来のビル管理におけるメーター点検は、目視確認と帳票に写真を添付した上で、手入力で数値を記録するアナログな手法が一般的でした。この方法は非常に手間がかかる上に、誤記入が頻発するなど多くの課題を抱えています。
そこで現場帳票ペーパーレスソリューション「ConMas i-Reporter」と画像解析AIソリューション「hakaru.ai byGMO」はAPI連携し、スマートフォンやタブレットのカメラでメーターを撮影するだけで、自動でメーターの数値を読み取り、帳票記入まで行えるサービスを提供しています。これによりメーター点検の従事者は、作業工数を削減するとともに、帳票の誤記入を防ぐことができます。また帳票をペーパーレス化することで、業務にかかるコストを抑えることにもつながります。
現場帳票ペーパーレスソリューション「ConMas i-Reporter」と画像解析AIソリューション「hakaru.ai byGMO」のAPI連携【出典】プレスリリース「シェアNo.1現場帳票ペーパーレスソリューション 「ConMas i-Reporter」と AIによりメーターの値を読み取る 「hakaru.ai byGMO」が連携」
家庭用燃料電池と気象データのAPI連携
自然災害が発生したとき、二次被害としてライフラインが遮断されることがありますが、その被害のうち約9割は停電です。そこでパナソニックは、家庭用燃料電池「エネファーム」にウェザーニュースの「停電リスク予測API」を導入しました。これによりエネファームは、気象データをもとに落雷や台風、ゲリラ豪雨といった自然災害を予測し、万一の停電に備えて自動で最適発電を行う機能を有しています。
また、毎日18時にウェザーニュースが提供する天気予報を受信し、翌朝4時に当日の運転計画を自動作成する機能も搭載しています。これにより、エネファームと太陽光発電を併用している家は、晴天のときは太陽光発電、夜間はエネファームというように、太陽光発電を最大限に活用した形で電力自給することができます。
パナソニックの「エネファーム」とウェザーニュースが提供する「停電リスク予測API」のAPI連携【出典】プレスリリース「家庭用燃料電池「エネファーム」の戸建住宅向け新製品を発売」
最小限の手間とコストで必要な機能を実現できるAPI連携
現在、企業と企業、また企業と行政によるAPI連携が盛んに行われており、APIエコノミーの輪が広がっています。
分野を問わず、最小限の手間やコストで必要な機能を手に入れることができ、かつ自社のプロダクトやサービスの開発にリソースを割けるようになるのがAPI連携のメリットです。
さまざまな環境変化に対して自社だけで対応しようとするのではなく、API連携を活用して社外の技術力を広く取り入れることは、DX推進において効果的な姿勢といえるでしょう。
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